◆第43号2007年11月4日

感謝を忘れず謙虚な心を持つから人は成長する!

 
 プロ野球の日本シリーズで、中日ドラゴンズが日本ハムファイターズを破り、対戦成績を4勝1敗として、なんと53年ぶり2度目の日本一に輝きました。そして、日本シリーズ最高殊勲選手(MVP)は、中村紀洋選手が獲得しました。中村選手は、昨年、年棒の減額でもめてオリックスを自由契約になり、どこの球団からも煙たがられ、最悪の状態でした。その中村選手を中日ドラゴンズは、2軍戦のみ出場が可能な育成選手として、年俸は昨季の50分の1の400万円で一員にしました。この待遇を素直に受け入れられたのかどうかは分かりませんが、オリックスと契約していれば・・・と内心思っているかもしれません。中村選手は会見で、「野球小僧として初心に戻り、野球ができる喜びを感じている。早く支配下選手に上がれるよう、自分の力を出してアピールしたい」と言っており、金色に染めていた髪を、初心を忘れないよう高校球児のように短く刈り込みました。その謙虚さが1年通じて変わらなかったことで信頼を生み、努力も認められ、チャンスをつかみ、シリーズでは好打でチームを日本一に押し上げたのです。私は、中村選手が崖っぷちに追い詰められたからこそ、人間的な成長ができたのだと思います。
 オリックスを自由契約になっても腐ることなく自主トレを1人で行い、キャンプインもユニホームがないまま1人で頑張っていました。プロとして自分のやるべきことだけはやっておこうと練習に取り組んでいたところ、尊敬していた中日・落合監督から連絡を受け、テスト生という立場でキャンプに参加しました。3人の娘を持つ親として、一野球人としてこのチャンスを生かさずには男ではないと思い、泥にまみれる過酷な練習をしてきました。そのひたむきな努力が実り、開幕戦ではスタメンで起用され、お立ち台にまで立つことができました。毎日、毎日、野球ができること、ユニホームを着られることに感謝しながら、夢中で野球に打ち込んできたそうです。最後に野球の神様が、日本一という最高のご褒美を与えてくれました。中村選手は一回頂点まで登りつめた選手です。これまで傲慢さもあったでしょう。しかし、這い上がるしかない状況で、謙虚な心を取り戻し、「感謝」の気持ちを持ち続けたからこその栄誉であると思います。中村選手は感謝と言う2文字と、中日の落合監督に拾われて復活しました。ボクシングの亀田親子も、中村の復活劇は参考になることでしょう。
 
さて、皆さんは過去の実績にこだわり、「謙虚」や「感謝」の心を忘れていないでしょうか。
 
経営者、幹部の方々は、これまで一角ならぬ努力の結果、「仕事における成功」を成し遂げてきました。たしかに素晴らしい結果であるといえるでしょう。しかし、ここで注意しなければならないことがあります。それは、どんなに偉くなった、強くなったとしても、そのことに驕り昂ぶってはならないということです。中村選手が、初心の気持ちになったように、人はある程度の地位になると常に謙虚でなければなりません。仕事人の幸福の本質は、他人から「評価を得ること」への満足感であります。もちろん、自分自身が満足できる結果を得ることも大切ですが、それだけでは、ひとりよがりになってしまいます。周囲の人間からも評価されてこそ、初めて幸福感を感じるものです。
「他人による評価」こそが、真の意味での評価だと思います。自分にとっては100点満点の結果でも、世間の評価や上司の評価、お客様の満足を得られなければ、それは100点ではありません。また、仮に人並み以上の成果を上げたとしても、そこで満足して成長が止まってしまうのでは、「あいつは確かに凄いけど、現状に満足して進歩のない奴だ」と思われてしまうかもしれません。他人の評価、周囲の評価と照らし合わせ、自分がどの位置にいるのかを常に意識すること。さらには、ひとつの目標達成に満足せず、より高い山を目指し続けること。自分は、そうした終わりなき登山のまだ途中にいるにすぎないのだ、ということを自覚することが大切です。今の結果に満足せず、「自分は、まだまだ未熟だ」と謙虚になるべきなのです。
素晴らしい能力を持っている人が、それを鼻にかけず謙虚になれば、周囲からの評価が一変します。人の上に立つ立場のリーダーは、特に謙虚な気持ちを忘れてはいけません。リーダー自身が、謙虚な気持ちや行動を率先垂範すれば、それが「社風」の一つになって、反省や向上心、改革・改善意欲に満ちたチームになります。中日ドラゴンズも、中村選手の謙虚さが、「風土」を大きく変え、強いチームになったのではないでしょうか。私も常に謙虚、感謝を忘れないようにしたいものです。
◆第42号2007年10月28日

NOVAの経営破たんから考える「良いワンマン経営」とは?

 
26日、英会話教室最大手のNOVAが会社更生法の適用を申請しました。再建への更生計画は債権額の2分の1以上を持つ債権者の同意が必要ですが、受講料を前払いしている債権者は約30万人いると言います。更生計画案ができても、一人ひとりに賛同を求めるのは大変なことです。更生計画がスムーズに進むことは難しいのではないかと危惧します。場合によっては、NOVAが破産することにもなりかねません。実は私、毎月NOVAに通い英語の勉強をしていました。最近はトラブルが多くて心配していましたが、突然の教室閉鎖は大変残念でなりません。最大手だから信用していましたが、まさか…
NOVAは、昭和56年に大阪ミナミのアメリカ村に小さな外国語会話教室を立ちあげてから、型破りな発想と事業展開で平成8年11月にジャスダックに上場しました。NOVAの最大の過ちは、無謀な急成長を追いすぎて管理体制と人材育成が追いつかなかったことにあります。特に、平成に入ってからは、派手なコマーシャルとイメージ戦略で、毎年数10〜100校ものペースで規模を拡大し、英会話業界の50%超のシェアを占めるまでに急成長しました。駅前立地の教室や外国人講師による少人数制の語学レッスンという画期的なビジネスモデルは、ユニークな広告宣伝が功を奏したことにより、若い世代の支持を得たと思います。幹部から講師や店舗の運営者が不足するとの意見が出ても、猿橋氏は「そんなものは後からついてくる」と一蹴したそうです。講師の育成・補充が追いつかなくなると、講師を大量に採用しては、たった3日間の研修で講師をやらせていたそうです。「いつでもレッスン受講可」と説明しながら予約がとりにくくなり、生徒からクレームが増えていました。業界平均の1回当たり受講料は4000円であるにもかかわらず、長期契約で割引が大きくなる「ボリュームディスカウント」により1回分のレッスン料が1200円になる最長の契約を推奨していました。自ら利益が上がらない収益構造に陥っていったと言えます。今年の2月には、最高裁が解約金返金で生徒側に有利となる判決が出ると生徒離れが一気に加速し、19年3月期の最終損失は24億9500万円で2年連続の赤字となりました。管理能力や人材力を上回る拡大路線は虚偽説明や誇大広告を生み出す背景になったわけで、結果として、消費者を欺くことになりました。今後、経営再建の支援企業としてイオンなどに本格的に働きかけるほか、旅行大手のエイチ・アイ・エスやヤフー、楽天などに支援を仰いでいるようです。特に、楽天はNOVAの事業の中でも、テレビ電話による在宅レッスンが、自社のネット事業と相乗効果があるとみて関心を寄せています。
この経営破たんの背景には、NOVAの社長、猿橋氏のワンマン経営のやり方に原因があります。ワンマン経営が悪いかといえば必ずしもそうとは言えません。ワンマン経営には「良いワンマン経営」と「悪いワンマン経営」とがあるのです。「良いワンマン経営」とは、私はこの二つを自覚していることだと思います。
①自分の財産、生活のすべてをかけて会社経営すること
②経営の最終責任は、社長自身にあることを自覚していること
さて、猿橋氏は、「良いワンマン経営」だったでしょうか?NOVAのある幹部は、「猿橋は部下からの進言を聞けない人」だと言っております。すべての決済に自分が関わり、権限が集中していたそうです。企業が上場してある程度の規模になると、自分の権限を任せられる幹部の育成が大切です。急成長した企業のほとんどが、管理体制と人材育成が追いつかず、破綻や倒産する事態になっています。猿橋氏は、幹部や管理職、社員を信頼せず、細かな営業方針の指示までしていたそうです。自分の地位と名誉、財産を一番に考え、会社を自分一人の力で経営していると勘違いをしていたのでしょうか。
会社は、社長ひとりで成り立っているものではありません。しかし、その会社が万一傾いたら、損失を穴埋めするのはほかでもなく社長です。そのことをきちんと自覚したうえでの「ワンマン経営」であれば、それは「良いワンマン経営」だと思います。責任は負わず、しかし経営にはあれこれと口を出すというのでは、単なる「無責任」にすぎません。「良いワンマン経営」の本質は、独りよがりではなく、すべての社員やお客さま、さらには社会全体の利益を考えた経営であるといえます。社長自身や、自社の損得ばかりを考えるワンマン経営は、経営とはいえません。これからのワンマン経営は、創業時の理念を忘れることなく、「倫理観」「美徳」「利他」という思想をきちんと身につけていくことが大切であると肝に銘じてください。今後、NOVAは「猿橋カラー」を排除して、いい支援企業のもとで消費者重視の再建シナリオを描くことを期待します。
◆第41号2007年10月21日

社長が期待している管理者は「イエスマン」ではなく、「変革型リーダー」だ!

 
 最近、どうも管理者に元気がないように感じます。これまでの管理者は、社長の理念や方針を現場へ伝えるとともに、現場の問題や意見を吸い上げて社長に伝える情報の伝達の役割、そして、チームをまとめて部下を引っ張っていく役割がありました。先日もある社長が、「うち管理者は十分に役割を果たしていない。世の中が大きく変化しているのだから、管理者の役割は以前とは比べ物にならないくらい変わってきているにもかかわらず、その自覚がない」と嘆いていました。実は、この会社だけではなく、私にご相談にくる多くの社長の悩みが、現場を担う管理者をどのように育てていったらよいのかという相談です。今回は、管理者に求められる役割の変化について考えてみましょう。
かつては、社長からの指示や命令を部下に上意下達で下ろしていく「ピラミッド型」の情報伝達でした。管理者に権限委譲し、管理者は権限の範囲内で与えられた課題を受けて、その解決策を考え実行することで業績も伸びて来ました。それが、日本企業の強さの秘訣だったのではないでしょうか。しかし、これまでの環境やパラダイムが大きく変わり、かつてのマネジメントが通用しなくなりました。成果主義人事が導入されることにより、社員の自立化、少数精鋭組織、情報化が求められ、管理者は困惑しているようです。自ら課題を設定し、部下を巻き込んで問題解決せよと求められても、若手社員とのコミュニケーションが難しくなり、若手社員のモチベーションが上がらない、チームがまとまらない、あげくの果ては若手社員が辞めていくという始末です。また、現場では日々問題が噴出し、その火消しだけで管理者は大変であるのが実態です。このように、従来のピラミッド型からフラット型へと変わり、管理者の権限が縮小しています。さらに、若い優秀な社員を抜擢し、彼らのアイデアや発想を取り入れる企業も多くなってきました。これからの管理者はどうあるべきでしょうか?一言で言えば、「変革型リーダー」です。さて、社長が期待する変革型リーダーとは、どのような管理者なのでしょうか?
(1)社長から指示されたことだけをこなすのではなく、あるべき姿とそれを達成する課題を社長に意見具申する。
(2)トレンドや顧客のニーズからチャンスを発見して、新しい事業やサービスを創造していく。
(3)目標を達成するために、部下のモチベーションを上げ、チームのベクトルを合わせる。
 
本来、「管理者」とは、社長からも部下からも信頼され、組織の力をひとつのベクトルに向けて結集する要の存在です。そのためには、上からも下からも信頼されるだけの「人間力」を備えることが大切です。他人には絶対に負けない「何か」を身に付け、それでいて謙虚で、思いやりのある人間であること。しかも、他人に対してはもちろんのこと、自分に対しても厳しく、ここぞというときには部下を叱り、励まし、目標達成のために組織をまとめ上げる力を持つこと。また、社長の「知恵袋」として、つねに幅広い知識を吸収し、視野を広げ、状況判断や事業運営、危機管理などの能力を磨くこと。そして何より、「社長の分身」として、その意志を十分に汲み取り、現場にきちんと伝達するコミュニケーション能力を磨くこと。これらの力を磨くことが「変革型リーダー」になるために必要になってきます。これからの新しい時代の管理者になるために、人間力を磨き、「人間としての幅」を広げることにより、社長から「お前に任せれば安心だ」と信頼され、部下から「この人に従えば大丈夫だ」と尊敬される存在になりましょう。
◆第40号2007年10月14日

部下に教えすぎるな!部下が育つ機会・試練を与えていますか?

 
先日、ある企業の研修を担当させていただいた時のことです。採用が厳しくなっている一方、業績目標を上げられているため、一人の管理者が「もっといい人材を取ってください」と役員に迫っていた。私は、即座にこの管理者に言いました。「中小企業にいい人材が来ることが少ない。自分の指導力のなさを部下や採用責任者の責任にしてはいけません」と。バブル崩壊後の長期不況で、多くの企業が成果主義制度を導入し、人事改革に取り組んできました。その為、コミュニケーションの低下、チームワークの悪化、モラールの低下、人材育成の阻害など、大きな弊害が出ています。私たちの若い頃は、幹部や管理職に、居酒屋で仕事の愚痴を聞かされるのではなく、「人生とはどういうものか?」「仕事にどう取り組むのか?」を教えてもらい憧れたものです。しかし、最近の幹部・管理職は、経営と現場をつなぐ役割をせず、目先の数字を追い求め、自分の保身に走り、部下の成長や部下の人生に関心を持つことを忘れているように感じます。
 
さて、皆さんは、部下の成長や部下の人生を真剣に考えていますか?
 
経営資源には、ヒト・モノ・カネのほかに、情報・時間・技術・空間・企業風土など様々な要素があります。しかし、最も重要なのは「ヒト」です。モノを開発したり、製造・販売するのは「ヒト」であり、カネを稼いだり、使ったりするのも「ヒト」だからです。ヒトなくして、会社経営は成り立ちません。そのヒトを、ただのヒトではなく「人材」や「人財」にすることが、「いい会社」をつくるいちばんの近道であるといえます。人材育成は、幹部・管理職の重要な仕事のひとつです。幹部・管理職が「模範」や「手本」となることによって部下は育ち、会社は、有能な人材の集合体として跳躍することができるのです。逆に、幹部・管理職がしっかりとしていないと、社員全員の士気や能力を低下させることになりかねません。「部下は幹部・管理職の背中を見て育つ」ということを忘れないようにしたいものです。
 
あなたは部下に教えすぎていませんか?部下に試練や逆境を与えていますか?
 
ヒトを有能な「人材」「人財」に育て上げるために、幹部・管理職はあれこれと教えすぎないことです。西洋のことわざに、「魚を与えるよりも魚の釣り方を教えろ」という教えがあります。アドバイスを与えたり、手を貸したりするのではなく、やり方や手段を教えて、後は自分で試行錯誤の中で考えさせることが賢明です。ときとして、優秀な幹部・管理職ほど、部下に対して「自らの釣りのテクニックを見せたくなる」ことが多いものです。だからこそ「教える側」に立つ幹部・管理職は、つねに「魚の釣り方を教える」という視点を忘れてはなりません。テクニックや知識だけで指導しようとか、育てようと考えるのではなくて、考え方や理念を十分に叩き込み、基本を教えた後は、自分で気づかせて、何回もチャレンジさせて乗り越えるのを待つことが真の人材育成です。人から教えられたことはすぐに忘れるものですし、身につかないものです。必要に迫られて自分で感じたこと、興味をもって真剣に取り組んだことが血となり肉となるのです。ですから、幹部・管理職は「答え」として指示を出すのではなく、「答えにたどり着くヒント」をアドバイスするべきです。部下に考える時間を与え、部下が自ら答えにたどり着く支援をすることこそ、部下指導の本質があるのではないでしょうか。一番大切なことは、「部下に釣らせる」という成功体験を与えることです。部下が自分で自分の壁を打ち破り、自信を持つための機会や環境づくりと動機付けを行うことが幹部・管理職の本当の教育と言えます。
◆第39号2007年10月7日

あなたの人生はあなたが社長だ!

 
先日、ある会社で「営業マンの自己革新」というテーマで研修をさせていただきました。営業マン対象のテーマだったのですが、他部署の管理職の方々も率先して受けていただき、「やる気が出てきた」「人生観が変わった」というご感想をたくさんいただきました。私は、管理職も、営業マンも、まずは人として、「人生をどう生きるのか?」という夢や想いを持つことが最も重要だと考えております。もちろん、社長や役員の方も同じです。なぜかと言いますと、高度成長期のときは、何もしなくても物が売れ、目の前の仕事を一生懸命するだけで、年齢とともに出世でき幸せになれた時代でした。しかし、バブル崩壊後は、雇用形態が大きく変わり、リストラで管理するだけで稼げない管理職を大幅に減らし、成果主義を導入し、目先の成果で評価するようになりました。多くの管理職は、退任するヤクルトの古田監督のようにプレーイングマネジャーが当たり前のようになっています。管理業務よりも、数字の責任を持ち日々の売上を稼ぐことに仕事のウエイトが高くなっているのです。今や自分のことで精一杯の管理職には部下はついて行かなくなりました。管理職が自分の立場を守るために頑張れば頑張るほどストレスがたまり、鬱になったり、辞めていく方々が大変多くなっています。また、そんな管理職を見ている部下も、管理職になると残業が多くなり、責任も多くなり、あんな上司にはなりたくないと思い、若手も辞めています。
なぜ、管理職も若手社員も仕事を辞めていくのでしょうか?それは、皆さんが仕事と人生を区別して考えているからだと思います。私は、「仕事とは人生そのもの」であり、「人は仕事を通じて成長する」ものと考えています。人は皆、物心ともに豊かになり、人間として成長し、社会貢献したいと考えています。(第27号2007年7月15日「なぜ仕事をするのか?」を部下に教えられますか? ブログ参照)つまり、私たちは、企業人である前に、ひとりの人間として、人生をどう生きるのか?を真剣に考えて、仕事に取り組んでいかなければなりません。
 
唐突ですが、「あなたは幸福ですか?」と聞かれたら、あなたはどのように答えるでしょうか。
 
人間として「幸福だ」と感じられるかどうかは、自分自身の生き方や態度、行動だけでなく、周囲の態度や行動にも大きな影響を及ぼします。人間は社会性を備えた動物であり、他人と関わり合うことで、自己の存在を確認する動物です。あなたが、「会社が面白くない」「営業なんて嫌いだ!」「部下指導は面倒だ!」と思っているのならば、その空気は身近な人々にも悪い影響を及ぼします。それにより、会社全体を暗くしてしまっていることに気がつかないのでしょうか。逆に、あなた自身が「会社に来るのが楽しい」「営業が面白い」「世の中は生き甲斐がたくさんある」と思ったら、組織はどうなるでしょうか?その空気が社内に浸透し、会社のムードが明るく前向きなムードに変わるでしょう。会社のムードを盛り上げるのも、ダメにするのもあなた自身の気持ちひとつです。あなたがプラス発想で明るく振舞うことができれば、周りも変わり、会社も変わるのです。一人ひとりが輝いて人生を過ごすことで、会社も周りも幸せになります。「あなたの人生、あなたが社長です」。一回きりの人生!感動いっぱいの幸せな人生を歩んでください。
◆第38号2007年9月30日

あなたの1時間の給料はいくらですか?

 
 最近、セミナーや研修をしていると会社から給料をもらって勉強をしているのにも関わらず、仕事と思って取り組まない幹部や管理職の方々が、多くなってきています。また、「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」「なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?」などの会計の書籍が売れているように、コスト感覚のない人、時間をコストと考えていない人が多くなってきているように感じます。
さて、幹部・管理職の皆さんは、下記のご質問にすぐに答えることができるでしょうか。
①あなたの1時間の給料はいくらですか?
②あなたの1日の給料を支払うために、いくらの売上が必要ですか?
③あなたが会社に十分貢献するためには、年間、最低いくらの売上が必要ですか?
考えたことがないと思っているようでは、幹部・管理職失格です。全社員社がコスト意識を持って仕事をすれば、間違いなく会社の業績が伸びます。
 
①あなたの1時間の給料はいくらですか?
例)年収(税込み)1000万円、年間労働日数250日とします。
1000万円÷250日=4万円/日 
4万円÷8時間=5000円/時間
5000円÷60分=約83円/分
 
②あなたの1日の給料を支払うために、いくらの売上が必要ですか?
例)あなたの会社の損益計算書の一部が以下の通りであるとします。(売上を100とした場合)
 売 上     100
 仕入れ    ▲80
 経 費    ▲15
この場合、売上総利益(粗利益)は20(売上−仕入れ)となり、そこから経費(販売費及び一般管理費)を差し引くと「5」が営業利益です。給料は売上総利益、つまり「粗利益」から支払われます。売上が100のときに売上利益が20あるこの会社の売上総利益率(粗利益率)は、20÷100×100%=20%になります。
あなたの1日の給料は4万円ですから、これを売上総利益率の20%で割ると、4万円÷0.2(売上総利益率20%)=20万円の売上が必要となります。
 
③あなたが会社に十分貢献するためには、年間、最低いくらの売上が必要ですか?
会社は、直接利益を上げる営業部門だけでなく、人事、経理、開発、生産、物流などの部門に所属する人たちにも、給料を支払わなければなりませんし、将来に投資するための利益留保や株主への配当金なども必要です。
 これら全てをまかなうためには、管理職以上の場合、自分の給料の6倍の売上総利益を稼ぐ必要があると私は考えております。幹部や管理職が、会社に貢献するためには、4万円×6倍=24万円(売上総利益)を稼ぎ、1日の売上にすると120万円、年間の売上にすると120万円×250日=3億円を稼がなければなりません。さて、あなたはいくら稼いでいるでしょうか?あなたは胸を張って「立派に会社に貢献している」と言えますか?
 
人件費の高さを理解できれば、人材を有効に活用できないことが、いかに「もったいない」ことであるかが分かるはずです。限られた人材をいかに適材適所に配置し、きちんとした教育・訓練を施して人材力を高めるかが、中小企業の生命線です。また、あなた自身だけでなく、部下にも「コスト意識」を浸透させれば、社内全体に経営参加意識を醸成できるでしょう。幹部・管理職の皆さん、ぜひ一度、このような勉強の機会を設けてみてはいかがでしょうか?
◆第37号2007年9月23日

感動いっぱいの人生!

 
私事ですが、先週、娘の子供が生まれました。私は、この瞬間おじいちゃんになったのですが、嬉しさのあまり目頭が熱くなり、安心と喜びでいっぱいになりました。孫の顔を見ているだけで心が和み、安らぎます。孫が大人になる頃の日本は、これまで以上に深刻な社会になっていると予想されます。孫には生きる逞しさを育み、豊かな人生、輝く最高の人生を送ってほしいと願いました。
皆さんは、幸せな死に方をご存知でしょうか?私は、日本メンタルヘルス協会代表の心理カウンセラー 衛藤信之氏から、インディアンの死生観、人の正しい死に方を教えていただきました。「人の正しい死に方は、生まれる時と逆にならなければならない。生まれてくる時、赤ちゃんは泣きながら生まれてきますが、周りは新しい命の誕生を大喜びで迎えています。一方、死ぬ時、本人は満ち足りた人生に大笑いして死んでいきますが、周囲はその人の死を惜しんで泣いてくれる」のがインディアンの正しい死に方、生き方だそうです。インディアンの考え方は、ストレス社会に疲れた人にとって生き方を考え直す良いメッセージだと思います。これまでの日本経済の発展は、物質的なもの、金銭的なものを重視するあまり、精神面の豊かさを軽んじてきたことに対して警鐘を鳴らしているのではないでしょうか。どのように人生を歩んでいけばいいのか?周りの人とどのようにかかわればいいのか?を考え直すいいキッカケになります。人生でのピリオドは、死ぬ時ですが、仕事のピリオドは定年退職の時です。皆さんは、毎日を大切にし、感動して生きているでしょうか?定年退職のときに、どのように思われたいでしょうか?
私は、幸せになるためには、毎日の生活の中に、楽しみや生きている感謝、感動を発見していくことが大切だと考えています。人生には、ちょっとしたことだけど、心温まる感動がたくさんあります。その小さな感動を発見して、そのことに感謝していくことが、自分自身にとって「最高の人生」を全うすることができると思います。私はいつもセミナーや研修の最後に「感動いっぱい」の詩を詠んで、このことを皆さんにお伝えしています。
 
「感動いっぱい」
人間が生きるということは
毎日何かに感動し、感激してゆくことだと私は思います。
昨日は気がつかなかったものに
今日は新たな発見をして感動する。
 
年と共に顔にしわは出来ますが
心の中にしわは作りたくありません。
心の中にしわができたとき
人間は感動しなくなるのではないでしょうか。
 
感動、感激にかねはかかりません
社会的な地位や肩書きも一切関係ありません。
 
一生悟れなくてもいいから
感動いっぱい、感激いっぱいの 
いのちを生きたいと思います。
 
幸せを感じるためには、まず自分の幸せに気づかなければなりません。「幸せ」と言うと、夢のようなことや大成功を考える人がいますが、それはまだ自分の幸せではありません。「幸せ」とはそういうものだけではなく、日々の「小さな幸せ」に気づけるようになれば、毎日が感動できるのです。幸せを感じるためには、まずはありのままを受け入れて、周りに感謝して生活することと、今自分がもっている幸せを実感することが大切です。感動いっぱいの人生を送るためには、目の前にある小さな感動を感じる心のゆとりと感謝の気持ちを持ちたいものです。
◆第36号2007年9月18日

5Sが徹底できている会社は、ここが違う!

 
最近、色々な企業の管理職から、「挨拶をしない」「報告がない」「整理・整頓ができていない」など、当たり前のことを当たり前にできない部下が多いのでどうすればいいかとご相談があります。私は、その相談があれば、「あなたの当たり前とは、どのようなことでしょうか?」「あなたは当たり前の事ができていますか?」と問いかけます。例えば、部下がいつものように、机の上を散らかして帰ろうとしたので、「整理整頓して帰りなさい」と命じました。すると部下は、机の書類を隅にまとめて置きました。あなたは、「それでは整理整頓になっていない」と叱りますが、部下は整理整頓をしましたと言います。この場合、決して部下に悪気があるわけではありません。整理整頓がどのようなことかということを部下は知らないだけなのです。このようなことは、どの会社でも日常的に繰り返されています。
このような上司と部下の間の「認識のギャップ」を埋めるには、「何が当たり前なのか」「どういう形が、あるべき形なのか」という決まりごとを明確にし、それを共有するために、日頃から積極的にコミュニケーションを図ることが大切なのです。また、上司が部下に指示や命令をしたことは、上司が率先垂範していなければなりません。上司の机が汚いのに、整理整頓をしろと命令すると、部下は「言っていることと、やっていることが違うじゃないか!」と思い、信頼関係を失い、辞める原因になりかねません。では、この「当たり前」のことを徹底するための「5S」をご紹介しましょう。
 
■5Sとは
「整理」必要な物と不用な物を区別し、不要なものは捨てること
「整頓」必要なものを、必要なときに1分以内で取り出せる状態にしておくこと
「清掃」機械、設備、床などをきれいにし、保守点検を促進し、機会などの稼働率を上げる
「清潔」整理・整頓・清掃された状態を維持し、働きやすい職場環境を作ること
「躾」気持ちのいい挨拶、返事、職場規律などを身に付け、正しい作業ルールを守る体質を作ること
 
5Sは、いい会社、伸びる会社を作るうえで欠かせない「当たり前」のことです。「当たり前」のことを、「当たり前」に実践させることは、難しいです。5Sの意味は分かっているが、時間がないといい訳をしたり、徹底するために呼びかけても一時的に終わってしまう場合などあります。最初は、しっかりと意識をして、何度も反復して覚えこませることが必要です。毎朝の朝礼で、「わたしたちは、整理・整頓・清掃・清潔・躾を励行します」と繰り返して唱和させてみてください。人間は、自分が繰り返し語る言葉に対して、知らず知らずのうちに身体が反応する習性があります。3ヶ月もすれば、社員一人ひとりの仕事の能率や安全性が高まり、オフィスや工場全体が整理整頓され、驚くほど変わるでしょう。5Sを徹底すると、優秀な人材も育ち、定着もします。社長も役員も全員参加して、自ら率先して取り組んでいきましょう。
◆第35号2007年9月9日

会社を黒字にする社長はここが違う!

 
 私は仕事柄、東京、名古屋、広島、福岡、鹿児島など全国を飛び回っており、月の三分の一は、ホテルで宿泊しています。また、年に2回は海外に旅行することにしております。最近のホテルは、ほとんどが海外の高級ホテルや高級リゾートを真似をしているように感じ、日本の良さが薄れてきているのではと思います。昨今、ホテル業界では「2007年度問題」といわれ、東京においてはザ・リッツ・カールトン東京、ザ・ペニンシュラ東京などの世界に名だたる外資系ホテルが軒並みオープンしており、ホテルの生き残りをかけた競争が厳しくなっています。高級ホテルの過当競争が懸念されるなか、ビジネスマンを相手にした低料金の宿泊特化型ホテルの台頭も著しく、生き残りのために顧客ニーズを捉えた独自の路線で利用客を引き寄せる魅力的なサービスが生み出せるかが今後のホテル業界の課題といえます。高級ホテルへの対抗策として、多くのホテルの生き残り戦略が低料金化にあるのでしょうが、それ以上に、顧客は誰なのかを明確にして、ホテルとしてどのようなサービスを行っていくのか、他のホテルとどのように差別化していくのかがもっと大切です。戦略やコンセプトが重視されることこそ、ホテル業界そのものの質の向上や、そこで働くホテルマンの誇り、ひいてはやり甲斐にも繋がると思います。今後は、より一層「顧客の視点」に立った情報システムやホスピタリティを強化し、コンセプトはハイグレードかエコノミーのサービス業を目指していくことが、ホテルが勝ち残っていく課題と言えるでしょう。
一方、旅館に目を移してみますと、法人需要で賑わった温泉の老舗旅館でさえ、倒産の憂き目を見るようになっています。ところが最近は、閉鎖された旅館を「再生」して蘇らせるケースが目立って増えてきています。この厳しい環境の中、株式会社星野リゾートは、老舗温泉ホテルを改革し、2001年破綻(負債147億円)したリゾナーレ小渕沢を再建し、3年で黒字経営に蘇えらせ、最近では老舗旅館の再生を行っています。なぜ、この厳しい環境の中、リッツカールトンや星野リゾートが業績を伸ばしているのでしょうか?これらの企業に共通することは、リピート率を上げるための顧客サービスを実現するために、現場への権限委譲と「チームワーク」でとりくんでいることです。職位、勤続年数、年齢、性別に関係なく、ビジョンを共有し、それを達成しようとするチームづくりを徹底しています。星野リゾートは、リゾート運営のノウハウを蓄積し、秀逸なオペレーターとして 顧客満足と環境に配慮した形で確実な収益を上げていく「リゾート運営の達人」を目指しています。企業ビジョンに共感し、自らの力を伸ばし、自由な主張と行動を通して組織に貢献することが、アルバイトやパートにまで伝わっているからこそ、業績を伸ばし続けている一番の理由ではないでしょうか。黒字会社になるか、赤字会社になるかを決める最大のポイントは、社長にあります。星野リゾートの社長の星野氏は、コンセプトづくりに社員を参画し共感を得た策を実施しています。社員にコンセプトづくりまで参画させることで、社員が自ら考え、自ら行動するのです。では、黒字会社になれる、社長がすべき仕事とは以下の6つです。
 
①利益の出るしくみを作り続けていくこと
②経営理念や経営方針を策定し、それを徹底させ続けていくこと
③より良い方向へ変化し続けていくこと
④いろいろな問題を乗り越え続けていくこと
⑤仕事を通して社員を成長させ、会社を発展強くし続けること
⑥社員には最高の満足を与え、お客様には最大の信頼を得るために努力をし続けること
 
利益が出なくなり、あせった社長が、よく部下に対して、「もっと利益を取れ!」とはっぱをかける状況をよく目にしますが、これは逆効果であることに気付かないのです。仕事を通して社員を教育し、成長させ、社員に最高の満足を与えることで、お客様から最大の信頼を得ます。皆さんの会社は、アルバイトやパートまで理念を浸透させ、社員に最高の満足を与えているでしょうか。
◆第34号2007年9月2日

若手社員はなぜ会議で発言しないのか?

 
ある顧問先の会議に参加したときのことですが、全く意見を言わない若手社員がいました。会議では、上司と部下の関係があり、若手社員は言いたいことも言いにくいのでしょうか。この若手社員の上司は、威圧的な強さを誇示したい人で、常に怒っているようなしゃべり方をする人です。若手社員は、常に怒られているような気分になり、怒られるんじゃないかといつもビクビクしています。ここまでくるとパワハラとしか言いようがありません。ハラスメントが社会問題になっているにもかかわらず、この上司は自分がパワハラをしているという実感がないことに問題があります。
この若手社員は以前に「もうちょっと考えてから発言しろ!」とこの上司から叱責されてから、自分の意見を言うよりも、黙っていたほうが楽だと思い込んでしまったようです。このように若手社員の発言や発想を殺すようは言葉を「フリーズワード」といいます。「フリーズワード」のように、叱責すればするほど、叱責された若手社員には防衛本能が働くだけです。
あなたの会社にも新入社員が入社したころは元気ハツラツであったのが、しばらくすると元気がなくなって萎縮していく社員がいませんか。その要因の多くは、上司の間違ったリーダーシップにあります。今や権力を振りかざすリーダーシップではなく、若手社員の気持ちを汲み取るリーダーシップが求められています。若手社員の考え方や価値観を理解し、彼らの心の充足を得られるように支援することが大切です。特に、会議では、若手社員が臆することなく自分の意見を言うことができ、若者の発想をどんどん取り入れていかなければなりません。若手社員にとって、意見を受け入れてもらえなければ、傷つくことを避けて、気持ちに壁を作ってしまいます。それは上司が、無意識のうちに攻撃してしまっているからです。上司が自分の意見を押し付けて、若手社員を批判しているのです。若手社員を叱る時には、「相手(YOU)」を主語にした言い方をするのではなく、「私(I)」を主語にして自分がどう感じたか、相手に何を分かって欲しいのかを伝えたほうが上手く行く場合が多いものです。指示的なYOUメッセージと非指示的なIメッセージをご紹介しましょう。
 
■YOUメッセージとは
・「プロジェクト会議に出るときは、自分の意見くらい考えて来い!」
・「ダラダラ説明しないで、簡潔に言ったらどうなんだ!」
・「会議中にしゃべるな!人の意見を聞け!」
・「話しているのだから、メモぐらいしたらどうなんだ!」
■Iメッセージとは
・「このプロジェクトを成功させるために、君の若い発想を取り入れたいんだ」
・「あと10分しか時間がないんだ。みんなの意見を聞きたいから結論から聞かせてくれるかな」
・「君たちが話していると ○○君の声が聞こえないので困るんだよ」
・「メモしないで聞いていると後で同じことを言わなければならなくなるから心配なんだ」
 
IメッセージのほうがYOUメッセージよりも相手の心に届きやすいにもかかわらず、95%以上の上司が、YOUメッセージで部下を叱責しています。YOUメッセージのコミュニケーションの特徴は、相手の行動に対して上司が怒りを伝達しているだけです。困った状況を作り出しているのは相手で、その解決を相手に求めているのです。反対に、Iメッセージは、相手を責めるのではなく、「困っているよ」というように、自分の気持ちを伝える自己開示メッセージです。Iメッセージで伝えられた部下は、上司に怒りをぶつけられたわけではないので、意見や指示を素直に聞いてくれます。上司が意識を変え、普段の職場でも若手社員とのコミュニケーションを良くすることにより、社内の雰囲気が変わり、若手社員が会議で意見を発言してくれることでしょう。明日から早速Iメッセージを使ってみてください。
◆第33号2007年8月26日

 全社員が経営理念を意識して仕事をしているでしょうか?
昨日、「リッツ・カールトンから学ぶ最高のサービス」というセミナーを受講した人とお話しする機会がありました。リッツ・カールトンのサービスは感動のサービスと評価されているので、さぞかし一流のスタッフが出てきてすごいサプライズを提供してくれるのかと思っていたそうですが、いい意味で期待を裏切られたようでした。リッツ・カールトンの顧客満足や最高のサービスの本質は、「理念の徹底」にフォーカスされていることだと教えていただきました。
皆さんも本で読んでご存知な方もいらっしゃるかもしれませんが、リッツ・カールトンでは、理念を浸透させるために、毎日、ラインナップと呼ばれる対話方式の朝礼を行っています。全世界3万1千人の全従業員がクレド(リッツ・カールトンの理念や使命感を凝縮した不変の価値観)に関する1つのテーマについて日替わりで自分の経験や考えを発表する時間を設けています。クレドとは「信条」という言葉で、リッツ・カールトンの従業員は四つ折の小さなカードを常に携帯しています。カードの表面には「クレド」「従業員への約束」「モットー」「サービスの3つのステップ」、裏面には「ザ・リッツ・カールトン・ベーシック」という行動指針が示されています。「共通の価値観」を全従業員に浸透させるためには、クレドだけでは十分ではなく、QSPというリッツにふさわしい性格や才能を持った人材を見分けるプログラムがあるそうです。行動心理学を取り入れた手法で入念な面接試験が行われるそうです。そのほかにもOJTやさまざまな仕組みを構築して、まさにCSの真髄を極めていると言えるでしょう。もし、リッツ・カールトンのサービスをご存じないようでしたら、ぜひ一度行かれることをおすすめします。スタッフと接した瞬間に、「リッツ・マジック」とも形容されるサービスを実感していただけると思います。
私は、セミナーや研修で、「あなたは会社の経営理念に基づいて仕事をしていますか?」と参加者に伺います。意外なことに、ほとんどの方が「経営理念を意識することなく仕事している」という答えが返ってきます。社長室や会社案内・ホームページなどには、立派な経営理念が掲げられているにもかかわらず、意外に浸透していないことに社長はびっくりされます。いかに社長が崇高な経営理念を考えていたとしても、実際に幹部・管理者から出る指示が、売上・利益・コストダウンなどの数字のみであると、従業員がハッピーになれるわけがありません。顧客満足ではなく売上や利益を追いかける会社であれば、不祥事やコンプライアンス違反が起きても不思議でありません。リッツ・カールトンでは、サービスのサイクルは従業員の満足から始まると考えています。当然、企業だから最終目標としては利益を上げるということが求められますが、まず利益を求めるのではなく、従業員の満足があってはじめてお客様に満足を提供でき、その結果、会社に利益がもたらされるという考え方を持っています。
実際、高収益な会社ほど経営理念に周りが驚くくらいのこだわりを持っています。経営理念の実践が利益の源泉であり、経営理念が浸透していない会社は生き残れないといっても過言ではありません。「経営理念」とは、会社のビジョン・目標・理想・使命感を明文化したものであり、あるべき姿として、この会社は何のために存在しているか、この会社はどういう目的で、また、どういうやり方でやっていくのか?会社の将来像は?という点について、基本の考えを明確にしたものです。
しかし、社長が、経営理念を自らが語っているだけでは組織の隅々まで浸透するものはありません。社員一人ひとりがしっかりと肝に銘じて理念に沿った行動をしてもらうためには、毎日、経営理念を唱和するだけではなく、人事評価の項目に経営理念に沿った行動を最重要項目に上げることが大切です。経営理念を遵守するより売上目標を達成することを優先する方が評価される評価制度では、従業員は売上を上げる行動を優先してしまいます。経営理念を浸透させるためには、「期待する人材像」に具現化し、「期待する行動指針」「求められる知識・スキル」「好ましい考え方・態度」「成果に結びつく行動特性」などを、職務基準書や人事評価制度に落とし込むことが必要です。このように人事制度を設計し、定められた手順を実行することにより、経営理念が浸透し、組織風土・企業文化が醸成され、そこから従業員の行動規範が形成されます。従業員が経営理念に基づいて行動することで社会からの信頼と評価が得られます。
最後に申し上げたいのは、社長が経営理念のためにどれだけ利益を犠牲にできる覚悟ができるか、すべてはその覚悟から始まると思います。社長にとって「お金より大切なものは何か」、会社において「利益より大切なものは何か」を従業員に明言することです。

◆第33号2007年8月26日 全社員が経営理念を意識して仕事をしているでしょうか?
 昨日、「リッツ・カールトンから学ぶ最高のサービス」というセミナーを受講した人とお話しする機会がありました。リッツ・カールトンのサービスは感動のサービスと評価されているので、さぞかし一流のスタッフが出てきてすごいサプライズを提供してくれるのかと思っていたそうですが、いい意味で期待を裏切られたようでした。リッツ・カールトンの顧客満足や最高のサービスの本質は、「理念の徹底」にフォーカスされていることだと教えていただきました。
 皆さんも本で読んでご存知な方もいらっしゃるかもしれませんが、リッツ・カールトンでは、理念を浸透させるために、毎日、ラインナップと呼ばれる対話方式の朝礼を行っています。全世界3万1千人の全従業員がクレド(リッツ・カールトンの理念や使命感を凝縮した不変の価値観)に関する1つのテーマについて日替わりで自分の経験や考えを発表する時間を設けています。クレドとは「信条」という言葉で、リッツ・カールトンの従業員は四つ折の小さなカードを常に携帯しています。カードの表面には「クレド」「従業員への約束」「モットー」「サービスの3つのステップ」、裏面には「ザ・リッツ・カールトン・ベーシック」という行動指針が示されています。「共通の価値観」を全従業員に浸透させるためには、クレドだけでは十分ではなく、QSPというリッツにふさわしい性格や才能を持った人材を見分けるプログラムがあるそうです。行動心理学を取り入れた手法で入念な面接試験が行われるそうです。そのほかにもOJTやさまざまな仕組みを構築して、まさにCSの真髄を極めていると言えるでしょう。もし、リッツ・カールトンのサービスをご存じないようでしたら、ぜひ一度行かれることをおすすめします。スタッフと接した瞬間に、「リッツ・マジック」とも形容されるサービスを実感していただけると思います。
 私は、セミナーや研修で、「あなたは会社の経営理念に基づいて仕事をしていますか?」と参加者に伺います。意外なことに、ほとんどの方が「経営理念を意識することなく仕事している」という答えが返ってきます。社長室や会社案内・ホームページなどには、立派な経営理念が掲げられているにもかかわらず、意外に浸透していないことに社長はびっくりされます。いかに社長が崇高な経営理念を考えていたとしても、実際に幹部・管理者から出る指示が、売上・利益・コストダウンなどの数字のみであると、従業員がハッピーになれるわけがありません。顧客満足ではなく売上や利益を追いかける会社であれば、不祥事やコンプライアンス違反が起きても不思議でありません。リッツ・カールトンでは、サービスのサイクルは従業員の満足から始まると考えています。当然、企業だから最終目標としては利益を上げるということが求められますが、まず利益を求めるのではなく、従業員の満足があってはじめてお客様に満足を提供でき、その結果、会社に利益がもたらされるという考え方を持っています。
 実際、高収益な会社ほど経営理念に周りが驚くくらいのこだわりを持っています。経営理念の実践が利益の源泉であり、経営理念が浸透していない会社は生き残れないといっても過言ではありません。「経営理念」とは、会社のビジョン・目標・理想・使命感を明文化したものであり、あるべき姿として、この会社は何のために存在しているか、この会社はどういう目的で、また、どういうやり方でやっていくのか?会社の将来像は?という点について、基本の考えを明確にしたものです。
 しかし、社長が、経営理念を自らが語っているだけでは組織の隅々まで浸透するものはありません。社員一人ひとりがしっかりと肝に銘じて理念に沿った行動をしてもらうためには、毎日、経営理念を唱和するだけではなく、人事評価の項目に経営理念に沿った行動を最重要項目に上げることが大切です。経営理念を遵守するより売上目標を達成することを優先する方が評価される評価制度では、従業員は売上を上げる行動を優先してしまいます。経営理念を浸透させるためには、「期待する人材像」に具現化し、「期待する行動指針」「求められる知識・スキル」「好ましい考え方・態度」「成果に結びつく行動特性」などを、職務基準書や人事評価制度に落とし込むことが必要です。このように人事制度を設計し、定められた手順を実行することにより、経営理念が浸透し、組織風土・企業文化が醸成され、そこから従業員の行動規範が形成されます。従業員が経営理念に基づいて行動することで社会からの信頼と評価が得られます。
 最後に申し上げたいのは、社長が経営理念のためにどれだけ利益を犠牲にできる覚悟ができるか、すべてはその覚悟から始まると思います。社長にとって「お金より大切なものは何か」、会社において「利益より大切なものは何か」を従業員に明言することです。
◆第32号2007年8月19日

リーダーは社長の役割と仕事を理解していますか?

 
先日、セミナーを受講した若手リーダーの方から、メールでご相談がありました。ご相談とは、「うちの社長は売上・利益ばかり言って、理念やビジョンがないので、仕事に身が入らない。会社を辞めようと考えている」という内容でした。会社は利益を上げないと存続できないことはわかりますが、社長の創業の思いは売上や利益だったでしょうか?社長が売上・利益ばかりを追求すると部下は疲れてきます。多くの社長は経営理念やビジョンをお持ちのことと思います。その思いを社員に伝えているでしょうか?伝えていても社員がきちんと理解しているでしょうか?社長の理念やビジョンを社員全員が共有することはなかなか難しいことだと思います。社長が立派な理念を掲げていながら、お金を稼ぐこと、会社を大きくすることが目的になってしまうと、売上・利益だけを部下に要求してしまいがちになります。もはや思いや理念は二の次になって、ビジョンが数字だけの目標に成り下がってしまいます。ある意味では、理念やビジョンのために、売上・利益を犠牲にする覚悟を持つべきです。売上・利益より重要なものは何か?このことは最近の不祥事からもうかがえると思います。
私は、会社経営には理念やビジョンの浸透が最も大切だと考えています。この会社は何の為に存在するのかということを常日頃から念頭に置き、社長自らが経営理念やビジョンを社員に語り続け、浸透させなければなりません。この若手リーダーが言うように、一番の問題は社長にあるのかもしれません。しかし、この若手リーダーの考え方にも問題があります。経営理念やビジョンを社長が語らないので、会社を辞めたくなる気持ちは分かりますが、この若手リーダーは社長の立場や会社の現状をどれほど理解しているのでしょうか。社長には全ての責任がのしかかってきます。社長の意思決定一つで会社の命運が分かれるといっても過言ではありません。故に孤独なのです。社長にとって一番重要な仕事は、決断することです。「決定」は、数ある選択の中から選べばよいのですが、「決断」は答えのないことに対して信じて決すると言うことです。そのためには、「見えない世界を見通す力」と「こうなりたいという強烈な願望」が必要になってきます。社長がビジョンを健全に語るためには、目先の売上や利益が上がっていることが前提なのです。資金的な余裕がなくなってしまうと、事業の目的がお金儲けになってしまいます。社長も一人の人間です。時には判断に迷い、誤り、間違えることもあります。ですから、若手リーダーが社長に理念やビジョンがないと嘆く前に、社長の期待に応えているのか、利益を上げることができているのか反省してみることです。リーダーに期待されることは、社長の分身となって「利益を上げる仕組みづくり」を支えることです。リーダーは社長の人間性にほれ込んで、社長の仕事を理解した上で、社長を補佐していく姿勢を持ってもらいたいものです。ご参考までに社長の役割と仕事を見ておきましょう。社長の役割は大きく3つあると考えています。
①現実と未来を見つめること
②打ち手を考えること
③責任を取ること
その上で、社長には6つの仕事があります。
①利益をあげる仕組みをつくり続けること
②経営理念や経営方針を策定し、それを徹底させ続けていくこと
③より良い方向へ変化し続けていくこと
④色々な問題を乗り越え続けていくこと
⑤仕事を通して社員を成長させ、会社を発展させ、強くし続けていくこと
⑥社員には最高の満足を与え、お客様には最大の信頼を得るために努力し続けていくこと
そのことは、私の新著「社長に好かれるリーダーになれ!」をお読みいただくと詳しく書いていますので、ぜひご参考にしてください。
この若手社員には「社長を責める前に、あなたはどれだけのことをしたのか考えなさい。人を責めても何も変わることはありません。あなたが変わればすべてが変わるのです」ということを伝えました。そして、「社長の気持ちを理解し、社長のブレーンとなって会社のビジョンを一緒に作り、会社を成長させていきなさい」とアドバイスしました。
◆第31号2007年8月12日

新入社員が定着して伸びる教育の本質は「守・破・離」

 
 今年入社した、新入社員が早くも転職を希望しているという驚くべき記事がありました。人材紹介最大手のリクルートエージェントには6月半ばで、前年同期2倍の新入社員が転職を希望しているそうです。他の人材紹介会社でも前年より2倍〜4倍の転職希望者が集まっています。皆さんはこの現実をどう受け止めますか。私は、企業が大量の新卒採用を進めた結果、人材と職場のミスマッチが増えたことと、管理職が新入社員に対してキチンとした指導ができていないことに原因であると考えます。最近では、採用した新入社員が簡単に辞めないように「リテンション教育」を実施したり、「メンター」と呼ぶ指導者を新人につける制度を導入する企業が増えています。入社2年目から5年目の先輩社員が新人社員に半年間マンツーマンで業務を教え、メールで毎日業務の復習、月1回の面談をして仕事を教えています。これが本当に新入社員の指導になっているのでしょうか。先輩社員に対して、メンターとしての教育をしたのでしょうか。ただ、新入社員を辞めさせないための手段であるような気がします。教育とは、教え育むことです。彼らに期待と愛情を持って、長期的にあらゆる機会を通じて、繰り返し教育をし、育てていくものです。彼らが人生観、仕事観を確立していくことは、すぐにできるものではありません。だからこそ、初期教育の時点から継続的にそれらを確立していく基礎づくり教育が必要なのです。
ところで「守・破・離」という言葉があるのをご存知でしょうか。「守・破・離」は、物事を学び始めて独り立ちするまでの段階を示した概念です。もともと能を確立した世阿弥の教えであり、柔道・剣道・空手や茶道・華道・歌舞伎などの習い事などをするときに語り継がれてきた言葉です。まず「守」は、指導者から教えられた基本や型を徹底して繰り返し身につける段階、「破」は、基本や型を守り抜いたうえで革新の手を加える段階(自分なりに工夫したり、新しい要素を加えたりする)、「離」はさらに自分なりの工夫を加えて、自分自身のスタイル、独自の道を確立させる段階、というものです。つまり、どんな道、どんな職業であれそれを極めていくためには、「守」である基本や型を徹底して学ばなければならないということです。
新入社員教育において、考え方や基本を徹底的に身につけさせないまま現場に配属してしまうとどうなるか。仕事が上手くできるわけがありません。上司や先輩に対して、冷たい人だと人間関係に不安を感じてくるでしょう。特に、最近の若者は根気がないため、仕事が上手くできないとすぐに「この仕事は自分には向いていない」と判断して辞めていくようです。たとえ辞めないにしても、すぐに現場に出ろという教育では、基本や型をキチンと習得できていないため、自己流に陥り、ある程度のところで伸び悩んでしまう社員しか育たなくなってしまいます。
一般的に、「学ぶ」は「まねぶ」、つまり「まねをする」が語源であると言われています。私は新入社員研修で「良い先輩社員のまねをして仕事を学べ」とよくお話をします。ところが、新入社員が学ぶべき理想の上司や先輩がなかなかいないことも大きな問題であると感じています。理想の上司やメンターのような先輩がいないことが、若手社員が会社に見切りをつける真の原因ではないでしょうか。
どんな仕事でも「守・破・離」が大切です。上司・先輩は「守・破・離」を再確認すると共に、新入社員にもこの「守・破・離」を教えるべきです。特に、経営理念や経営哲学をしっかり叩き込むことが伸びる社員を育てる秘訣です。崇高な経営理念やビジョンがなければ「破」に気づくことはできないものです。ですから、今の即戦力化といわれる教育には大きな弊害が出てきています。真の教育とは、知識・スキルを短期で身につけさせることではなくて、理念・哲学をキチンと習得させて、徹底的に基本や型を繰り返し教え込むことです。当たり前のことが当たり前にできるようになるまで、膨大な時間とエネルギーがかかるものと心得なければなりません。経営者・管理職は今こそ先人の教えにゆっくり耳を傾けてはどうでしょうか。
◆第30号2007年8月5日

リーダーに求められる9つの魅力

 
 先日、日本マクドナルドホールディングズの業績が回復しているという記事がありました。業績が回復をしている大きな理由は、リーダーが代わったことにあります。2004年に原田泳幸氏という新しいリーダーが就任した当初は、古い経営陣を一掃して、過去の経営と決別するため藤田田氏の創り上げた企業風土を刷新していきました。最大の秘訣は、米国本社の意向に沿ったグローバル戦略を推進したことにあります。2006年度には5年ぶりに年間売上レコードを更新し、2007年6月の中間決算は、前年度同期比で5.5倍の経常利益を出しています。原田氏が就任してからは、明確な戦略を打ち出し、その戦略を浸透させるために、全社員に明確なゴールを示し、ゴールまでの細かいステップを分かりやすく伝え、今やるべきことを具体的に伝え、リーダーシップを発揮していったことが現場をよみがえらせたようです。ビジョンを明示して、現場社員との対話を持つことで、「チームのパフォーマンスを最大化させる“セルフコントロール”」に秘訣があると雑誌で述べていました。まさしく、企業を変革していく時には、改革を指揮するトップの「信念」と「明確な戦略」「現場との対話」「忠実な戦略の実行」が、極めて重要といえます。原田氏の功績を見ると、やはり、トップのリーダーシップの力が大きいと感じます。外資系一筋のキャリアを歩んできたことで、子会社トップの処世術を心得ていたことも大きな要因でしょう。
これからの変革型リーダーは、親分肌的、職人的なリーダーではなく、ビジョンを明確にして戦略を説明し、現場で部下とコミュニケーションをとって、部下と共創していくリーダーシップを発揮することが求められています。戦略を実現するためには、部下が主体的かつ能動的に参画することが不可欠です。部下のやる気と本気、コミットメントをいかに引き出すか、いかに高めるか、コミットメントおよび動機づけの本質とそのマネジメントを身につけなければなりません。ここで忘れてはいけないのが、異なった価値観を持つ部下を育てて活かすには、「社長を尊敬している」「部長に憧れる」「課長のようしなりたい」というように、リーダーに魅力があることが前提です。太平洋戦争時代、連合艦隊司令長官山本五十六は、その傑出した人柄で今なお語り継がれる魅力あるリーダーの一人です。山本五十六は、大変な部下思いであったそうです。愛情をもって部下を叱咤し、その思いは部下にもよく伝わったといいます。「山本長官のためならなんでもやれそうだ」と、そういう思いにつき動かされた部下は多かったと聞きます。 
ここで、部下から見てリーダーの魅力とはどのようなことか考えてみましょう。私はリーダーの魅力には9つの要素が必要であると考えます。細かいことも入れるともっとあるでしょうが、最低これだけは心得てほしいものです。
①人柄がよい
②部下の成長を考えて、面倒をよく見る
③目標達成意欲が強く、責任感がある
④物事を肯定的に、前向きにとらえ、実行力がある
⑤論理的な思考ができて、話が明快である
⑥勉強熱心である
⑦人を思いやる
⑧感謝の気持ちを持ち続ける
⑨健康で、私生活が乱れていない
いかがでしょうか。「リーダーに求められる9つの魅力」を前提に、リーダーがイキイキ楽しく、仕事をしている姿が肝心です。皆さんも、魅力的なリーダーを目指して、部下をひきつけるリーダーシップを発揮しましょう!
◆第29号2007年7月29日

7月31日出版 「社長に好かれるリーダーになれ!」

 
7月31日に、私の著書『社長に好かれるリーダーになれ!』が出版されることになりました。この本は、決して社長にゴマをすれということではなく、社長から信頼され評価される、仕事を任されるリーダーになってくださいと言う願いで書きました。私は、経営コンサルタントとして多くの企業のお手伝いをして、社長が一生懸命に頑張っても、業績が伸びない企業を多く見てきました。業績が伸びない大きな原因は、社長の分身となる「デキる幹部・リーダー」が育っていないということにあります。会社を経営するのはもちろん社長ですが、どんな小さな組織でも、社長ひとりで動かすのは困難であり、ましてや会社を成長させるには限界があります。そこで期待されるのが、社長の意思をきちんと汲み取り、それを現場に浸透させ、活発に事業を推進させることができる幹部・リーダーの存在が重要になってきます。伸びる会社には、社長を上手に補佐して、その夢や目標を形にしようと現場に働きかけ、行動させる幹部・リーダーがかならずいるものです。
前回、社長の力量で会社の成長が99%決まると書きましたが、厳密に言えば、自分より仕事のできる人をどれだけ社長が集めることができるか、活かすことができるかにかかっています。社長は大変な責任とプレッシャーを一人で負っているため、右腕になる幹部やリーダーがほしくてたまらないのです。社長はブレーンとなる幹部と「二人三脚」で、会社という「人間の集合体」を同じ志、夢、目標に向って前進させていきたいと期待しています。幹部・リーダーとは、社長の孤独感や責任感の辛さや苦しみを理解し、夢や意思を分かち合い、社長に代わって現場に働きかけ、目標を実現させていくという役割を担っています。そのためには、幹部・リーダーが「人間としての幅」を備え、他人には絶対に負けない「強み・得手」を身につけ、それでいて謙虚で、思いやりのある人間であることが、社長から信頼され、部下から信頼される存在になるような努力をしてほしいものです。企業を発展させるのも、衰退させるのも、社長を支える幹部・リーダーの存在にかかっています。社長もひとりの人間です。ときには判断に迷い、誤り、失敗することもあります。そんな社長の気持ちを汲み取り、人間としての社長を見つめ、立場をわきまえながら助言や提案を行うことが、真の幹部・リーダーではないでしょうか。「あいつなら分かってくれる」「あいつなら相談できる」と社長に信頼されてこそ、幹部・リーダーとしての真価を感じられることでしょう。そして、社長からは「お前に任せておけば大丈夫だ」と信頼され、部下からは「このリーダーについて行こう」と慕われれば、幹部・リーダーとしてこの上ない喜びでしょう。
この本は、「デキるリーダー」となるために必要な要素の磨き方、リーダーとして会社の発展を支えるためのノウハウを四章にわたってまとめています。
・第一章では、「人間としての幅」を広げることの大切さと、幅の広げ方について
・第二章では、社長と付き合っていく上で大切な、「社長の気持ち」を理解することについて
・第三章では、社長の意思や目標を理解して浸透させ、機能的に現場を動かすかについて
・第四章では、組織の総合力を高めるため、部下をやる気にさせ、仕事の成果を高めるかについて
私は社長からも部下からも頼られる「デキる幹部・リーダー」が増え、日本の経済界がますます元気になればと願っています。皆さん、社長の分身となり、社長を補佐するリーダーを目指しましょう!
◆第28号2007年7月22日

社長は「良い人間」づくりを忘れるな!

 
企業は社長の力量で90%が決まる、特に中小企業では99%が社長で決まると言われています。昨今の企業の不祥事をみるとよくわかります。社長の姿勢や考え方が部下の心をゆがめてしまい、企業が崩壊していることを考えると、100%社長で決まるとも過言ではないでしょう。一方、「企業は人なり」とも言われています。企業にとって一番大切な財産は、そこで働く人々ということですが、多くの社長は間違った解釈をしています。企業は人で決まるの「人」は、「社員である」と錯覚していることに驚かされます。社員の考え方・行動は社長がつくっていることに気づいていないのです。このような間違った思い込みが、問題を社員の責任にしてしまって、社長の責任をあいまいにしているのです。企業は人で決まると言いますが、その「人」とはまぎれもなく「社長自身」です。規模の大小はあるにしても、社長には全ての権限が集中しているので、社長が考えていること、評価すること、決めたことに基づいて社員が動くのです。このように、良い悪いは抜きにしてワンマン経営といわれる所以はここにあるのです。突き詰めれば、「良い会社」「悪い会社」があるのではなく、「良い社長」「悪い社長」がいるだけかもしれません。
「良い社長」「悪い社長」、つまり企業を発展させられる社長と発展させられない社長はどこに違いがあるのでしょうか?私は社長の人間観にあると考えます。3大経営資源に「ヒト」「モノ」「カネ」がありますが、「ヒト」を経営資源として扱うのは間違っています。これからの社長は、使用人発想ではいけません。今や社員はお金のためには働かなくなっています。個性を生かしたい、人間的に成長したいというように、キャリアや自己実現を強く求めるようになっています。まずは、人間として人格を認め、「良い人間」に育てていくという教育者の姿勢が社長に必要です。考え方や理念をキチンと教えることで「良い人間」をつくった上で、キャリアを積ませなければ、本物の人材には育ちませんし、社員も自己実現を果たせません。
では、「良い人間」はどうすれば育つのでしょう?一番大切なことは、社長自身がお客様、部下に感謝する気持ちを持っているかどうかが最も大切です。社長が、社員一人ひとりに、心の底から「こうやって会社がやっていけるのも君のおかげだよ。ありがとう」と感謝しているかです。お客様第一主義をスローガンとして掲げているだけではいけません。お客様に喜んでいただいたことでお金を頂いているのだと、心からお客様に感謝して、お客様の喜び・満足を日々追いかけているかどうかです。社長自身が「良い人間」からかけ離れて、創業の理念を忘れ、金儲けのために売上や利益を追いかけてしまうという過ちを犯していないでしょうか。まずは、社長自身が「良い人間」でなければなりません。「良い人間」づくりには、色々な要素がありますが、私は3つのことを教えています。
①信頼できる人間をつくること
②感謝の心を持つ人間をつくること
③利他の心を持った人間をつくること
「良い人間」をつくるために、社長が最大のエネルギーを使わなければいけない時代になってきました。即戦力ということで、スキルやテクニック、実務知識ばかりを教育したり、理念や哲学を忘れて売上や利益のことばかり言っていると、社員は本当に大切なことを見失ってしまいます。社長にとって、理念・考え方を社員に教えるほうがはるかに大切であることをご理解いただきたい。
◆第27号2007年7月15日

「なぜ仕事をするのか?」を部下に教えられますか?

 
 私はよく研修で、「なぜ仕事をするのですか?」と質問するようにしています。昨今、若い人の働く意識の低下が問題になっていますが、私は彼らに働く意味を教えられない親や上司に問題があると感じています。先般、ある企業の幹部研修で、『若手社員から「なぜ働くのですか?」とたずねられたら、どう答えますか?』と質問してみました。彼らからはあまり明快な説明が返ってきませんでした。幹部たち自身が、今までなぜ仕事をするのかを考える暇もなく、一生懸命に仕事してきた人が多かったのです。頑張れば給料も地位も上がり、管理職になったころには、ノルマに追われ、社長と部下の板ばさみにあっても、子供の教育費、住宅ローンの返済のために頑張ってきたのです。多分、多くの人は、ライブドア元社長のホリエモンや村上ファンドのような「お金が儲かれば何をしてもいい」という仕事の姿勢には、「それは違う」と嫌悪感を持ったのではないでしょうか。にもかかわらず、「なぜ仕事をするのか」と改めて問われると、ほとんどの人が明快に答えられません。決してお金のためだけに働いているとは思っていないでしょうが…
 
 みなさんはイソップの寓話で「3人のレンガ職人」の話をご存知でしょうか?
ある旅人が道を歩いていると、3人の職人がレンガを積んでいるのを見かけました。
それを見て、旅人が1人の職人に聞きました。「何をしているのですか。」
 
・Aの職人:「見ればわかるだろう、レンガを積んでいるんだ」
先ほどより、元気にレンガを積んでいる職人を見かけましたので、同じ質問をしました。
・Bの職人:「ここに大きな壁を造っているんだ」
最初の職人と違い、テキパキとレンガを積んでいました。
さらに先に、イキイキと働いている職人を見ました。重そうなレンガを運んでいます。その職人にも同じ質問をしました。
・Cの職人:「俺たちは、歴史に残る偉大な大聖堂を造っているんだ!ここで多くの人が祝福を受け、悲しみを払うんだ!」
 
レンガを運んで積み上げるという仕事は同じなのに、この3人には何が違っているのでしょう?明らかに、仕事に取り組む意識が全く違います。上司の仕事がCのレンガ職人のようであったら、部下はこの仕事はやりがいがあるいい仕事だと思うことでしょう。反対に、Aのレンガ職人のように上司の仕事意識が低ければ、部下の仕事意識はもっと低くなり、仕事にやり甲斐すら感じることが出来ません。これから企業が勝ち残っていくためには、上司が仕事の意義や信念を持ち、部下に「なぜ働くのか?」という仕事観を若手社員にキチンと教えられるかが重要になってきます。
ちなみに、私は新入社員や若手社員には働く意義を次のように教えています。
   ① 物心共に豊かになり、人間として成長するため 
   ② その仕事を通して世の中に貢献するため
◆第25号2007年7月8日

あなたは社長に苦言を呈することができるか?

 
最近、急成長した新興企業の不祥事が目に付きます。東横イン、アパホテル、コムスン、NOVA、ブックオフ、フルキャスト・・・いずれもその業界で急成長した企業です。これらの企業はつい最近まで頑張っているいい会社と評価されていたから残念でなりません。そして、ミートホープの偽装問題も、雪印、日本ハム、不二家につづき、大きな衝撃でした。これらの不祥事はワンマン経営者が、独自の経営手法で強引に売上拡大していく体質に大きな落とし穴があります。少し前の、ライブドア・村上ファンドなどと同じ過ちです。会社案内やホームページに、素晴らしい経営理念や志を掲げているのにも関わらず、お金儲けが目的になり、お客様を騙してしまうのです。お客様ありきの商売の本質を忘れ、「企業価値」、「時価総額」「利益至上主義」を意識する金儲け主義が一人歩きをしているのです。突き詰めれば、経営者の「モラルの欠如」が最も大きな原因ですが、組織としてコンプライアンスや企業倫理、CSR(企業の社会的責任)など、危機管理も完全に欠如しています。
企業が成長していく過程で、ワンマン経営者の存在が必要ですが、逆にワンマン経営が仇となることもよくあります。組織が大きくなってからは、イエスマンではなく、苦言を言ってくれる人が最も必要であるにもかかわらず、苦言を呈する側近の進言が疎ましくなる。よいことしか言わない側近に囲まれているうちに、自分がいつしか「裸の王様」になっていることに気がつかなくなってしまうのです。
多くの場合、ワンマン経営者に苦言を言える人はいません。経営者は都合のいいイエスマンばかりをはびこらせるのではなく、自分とは異質の人、違う意見の人、ブレーキを踏んでくれる人、叱ってくれる人を側近に置かなければいけません。いつも自分が正しいとは限らないのです。苦言を言ってくれる人に耳を傾けるかどうかで、ワンマン経営者が本当の意味で「尊敬される偉大な経営者」となれるかどうかが決まるでしょう。
さて、経営者が意思決定をするとき、どのような基準でしているでしょうか?経営者の意思決定チェックリストを書いてみました。経営者は自分が出来ているかチェックし、経営者でない人は、自分の会社の経営者が正しい経営をしているかどうかをチェックしてみてください。
 
1.創業の精神、経営理念、事業目的に即して考えているか?
  2.社会への貢献、責任を考えているか?
  3.私利私欲に偏った意思決定をしていないか?
  4.常にお客様の満足を考えているか?
  5.将来のビジョンの布石になる意思決定をしているか?
  6.これまでの慣行や、既成概念や体験にとらわれていないか?
  7.幹部や社員の意見や提案に素直に耳を傾けているか?
  8.自社の経営資源の強みを活用しているか?
  9.情報を自社で活用しやすいように加工して使っているか?
 10.意思決定後に、他の有力案ができたときには、柔軟に対応しているか?
 
特に、中小企業の経営者は、人生を賭けて会社を経営しています。しかし、会社は経営者ひとりで成り立っているものではありません。幹部の立場から、客観的に判断し、経営者の考え方や指示が間違っているときは、従順にしたがってはいけません。特に、違法行為や反社会的行為に発展するときには、幹部も人生を賭けるつもりで、経営者と真正面から向き合い、間違っている方向を正すべきです。それが幹部の最も重要な任務ではないでしょうか。
◆第24号2007年6月23日

仕事の基本はPDCAサイクル

 
6月の20日に、日本マクドナルドホールディングスが、地域別価格を導入しました。東京など大都市の約1255店で値上げ、地方の約130店では値下げをして、実験的に地域別の料金体系を導入しました。大都市圏では、人件費や店舗の賃料が高騰するなどし、地方との物価水準の差が大きくなったため、大都市圏での値上げは最大60円で、ほぼすべての商品が対象。人気商品のビックマックセットは、580円から640円に引き上げました。地方での値下げも最大60円で、約半数の商品が対象。ビックマックセットは、580円から560円にしました。今後は、販売への影響を数カ月かけて検証し、他地域への拡大を検討していくそうです。しかし、1200店で3〜5%の値上げをし、130店で2〜3%値下げというのは、単純な値上げのような気もします。ライバルのハンバーガーチェーンをはじめ、他の外食チェーンが追随するのかに大変興味があります。地域別価格はハンバーガー業界だけではなく、チェーン展開する外食産業や小売業にとっては壮大な実験ではないでしょうか?また、宅配便や郵便など地方ほどコストが上がるサービスは、地方を値上げすべきなのでしょうか?「どこでも、同じもの、同じサービス、同じ価格」という商売の常識を変えることができるか注目しましょう。
皆さんは「PDCAサイクル」というものをご存じでしょうか?これは「計画」(Plan)を「実行」(Do)し、その実行結果を「評価」(Check)して「改善」(Action)を行い、その改善を次の計画に活かしていく、という考え方です。私がマクドナルドの社長であれば、地域別価格というプロジェクトをPDCAのサイクルを徹底的に回して成功させてほしいと社員に檄を飛ばすでしょう。
今日は仕事の基本であるPDCAサイクルについてお話します。仕事は、とりあえず「目の前の事をこなすだけ」では成果はでません。質が高くて確実な成果を出すためには、PDCAサイクルを回すことです。このサイクルを回すことにより、質の高い仕事ができるのです。Plan(計画)は、仕事の目的を把握し、期限を確認し、仕事の計画を立てます。Do(実施)は、計画に沿って、期限を意識して、状況変化に柔軟に対応し、不明な点を相談します。Check(検討)は、仕事の進捗状況、結果などを検討、評価します。Action(是正)は、課題や改善点を考えて、次の目標、計画につなげます。このように、4つのプロセスを進めることがプロジェクトのような仕事では重要なのです。このサイクルのポイントの一つは、単に計画とのギャップをCheck(検討)するだけではなくて、さらに高いプロセスをつくる、コスト削減や利益拡大を図っていく視点で見るべきです。さらに、Action(是正)では、ワンランク上の目標、計画を設定してPDCAサイクルを上に昇華していくべきです。私は、「安安楽楽早正美環」という言葉をつねに念頭におきながら、現場や仕事をじっくり見るようにしています。それぞれの意味は、次の通りです。
 
安「もっと安くならないか」
安「もっと安全な方法はないのか」
楽「もっと楽にならないのか」
楽「もっと楽しくやる方法はないのか」
早「もっと早くできる方法はないのか」
正「もっと正しく、間違わずにできる方法はないのか」
美「出来上がりをもっと美しくする方法はないのか」
環「もっと環境にやさしい方法はないのか」
 
さて、皆さんの会社の現場は、いかがでしょうか。必ず、改善できるところはあるはずです。仕事の効率化を図るには、常に「安安楽楽早正美環」を意識し、PDCAサイクルを回すことをこころがけましょう。

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