◆第42号2007年10月28日

NOVAの経営破たんから考える「良いワンマン経営」とは?

 
26日、英会話教室最大手のNOVAが会社更生法の適用を申請しました。再建への更生計画は債権額の2分の1以上を持つ債権者の同意が必要ですが、受講料を前払いしている債権者は約30万人いると言います。更生計画案ができても、一人ひとりに賛同を求めるのは大変なことです。更生計画がスムーズに進むことは難しいのではないかと危惧します。場合によっては、NOVAが破産することにもなりかねません。実は私、毎月NOVAに通い英語の勉強をしていました。最近はトラブルが多くて心配していましたが、突然の教室閉鎖は大変残念でなりません。最大手だから信用していましたが、まさか…
NOVAは、昭和56年に大阪ミナミのアメリカ村に小さな外国語会話教室を立ちあげてから、型破りな発想と事業展開で平成8年11月にジャスダックに上場しました。NOVAの最大の過ちは、無謀な急成長を追いすぎて管理体制と人材育成が追いつかなかったことにあります。特に、平成に入ってからは、派手なコマーシャルとイメージ戦略で、毎年数10〜100校ものペースで規模を拡大し、英会話業界の50%超のシェアを占めるまでに急成長しました。駅前立地の教室や外国人講師による少人数制の語学レッスンという画期的なビジネスモデルは、ユニークな広告宣伝が功を奏したことにより、若い世代の支持を得たと思います。幹部から講師や店舗の運営者が不足するとの意見が出ても、猿橋氏は「そんなものは後からついてくる」と一蹴したそうです。講師の育成・補充が追いつかなくなると、講師を大量に採用しては、たった3日間の研修で講師をやらせていたそうです。「いつでもレッスン受講可」と説明しながら予約がとりにくくなり、生徒からクレームが増えていました。業界平均の1回当たり受講料は4000円であるにもかかわらず、長期契約で割引が大きくなる「ボリュームディスカウント」により1回分のレッスン料が1200円になる最長の契約を推奨していました。自ら利益が上がらない収益構造に陥っていったと言えます。今年の2月には、最高裁が解約金返金で生徒側に有利となる判決が出ると生徒離れが一気に加速し、19年3月期の最終損失は24億9500万円で2年連続の赤字となりました。管理能力や人材力を上回る拡大路線は虚偽説明や誇大広告を生み出す背景になったわけで、結果として、消費者を欺くことになりました。今後、経営再建の支援企業としてイオンなどに本格的に働きかけるほか、旅行大手のエイチ・アイ・エスやヤフー、楽天などに支援を仰いでいるようです。特に、楽天はNOVAの事業の中でも、テレビ電話による在宅レッスンが、自社のネット事業と相乗効果があるとみて関心を寄せています。
この経営破たんの背景には、NOVAの社長、猿橋氏のワンマン経営のやり方に原因があります。ワンマン経営が悪いかといえば必ずしもそうとは言えません。ワンマン経営には「良いワンマン経営」と「悪いワンマン経営」とがあるのです。「良いワンマン経営」とは、私はこの二つを自覚していることだと思います。
①自分の財産、生活のすべてをかけて会社経営すること
②経営の最終責任は、社長自身にあることを自覚していること
さて、猿橋氏は、「良いワンマン経営」だったでしょうか?NOVAのある幹部は、「猿橋は部下からの進言を聞けない人」だと言っております。すべての決済に自分が関わり、権限が集中していたそうです。企業が上場してある程度の規模になると、自分の権限を任せられる幹部の育成が大切です。急成長した企業のほとんどが、管理体制と人材育成が追いつかず、破綻や倒産する事態になっています。猿橋氏は、幹部や管理職、社員を信頼せず、細かな営業方針の指示までしていたそうです。自分の地位と名誉、財産を一番に考え、会社を自分一人の力で経営していると勘違いをしていたのでしょうか。
会社は、社長ひとりで成り立っているものではありません。しかし、その会社が万一傾いたら、損失を穴埋めするのはほかでもなく社長です。そのことをきちんと自覚したうえでの「ワンマン経営」であれば、それは「良いワンマン経営」だと思います。責任は負わず、しかし経営にはあれこれと口を出すというのでは、単なる「無責任」にすぎません。「良いワンマン経営」の本質は、独りよがりではなく、すべての社員やお客さま、さらには社会全体の利益を考えた経営であるといえます。社長自身や、自社の損得ばかりを考えるワンマン経営は、経営とはいえません。これからのワンマン経営は、創業時の理念を忘れることなく、「倫理観」「美徳」「利他」という思想をきちんと身につけていくことが大切であると肝に銘じてください。今後、NOVAは「猿橋カラー」を排除して、いい支援企業のもとで消費者重視の再建シナリオを描くことを期待します。

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