◆第33号2007年8月26日

 全社員が経営理念を意識して仕事をしているでしょうか?
昨日、「リッツ・カールトンから学ぶ最高のサービス」というセミナーを受講した人とお話しする機会がありました。リッツ・カールトンのサービスは感動のサービスと評価されているので、さぞかし一流のスタッフが出てきてすごいサプライズを提供してくれるのかと思っていたそうですが、いい意味で期待を裏切られたようでした。リッツ・カールトンの顧客満足や最高のサービスの本質は、「理念の徹底」にフォーカスされていることだと教えていただきました。
皆さんも本で読んでご存知な方もいらっしゃるかもしれませんが、リッツ・カールトンでは、理念を浸透させるために、毎日、ラインナップと呼ばれる対話方式の朝礼を行っています。全世界3万1千人の全従業員がクレド(リッツ・カールトンの理念や使命感を凝縮した不変の価値観)に関する1つのテーマについて日替わりで自分の経験や考えを発表する時間を設けています。クレドとは「信条」という言葉で、リッツ・カールトンの従業員は四つ折の小さなカードを常に携帯しています。カードの表面には「クレド」「従業員への約束」「モットー」「サービスの3つのステップ」、裏面には「ザ・リッツ・カールトン・ベーシック」という行動指針が示されています。「共通の価値観」を全従業員に浸透させるためには、クレドだけでは十分ではなく、QSPというリッツにふさわしい性格や才能を持った人材を見分けるプログラムがあるそうです。行動心理学を取り入れた手法で入念な面接試験が行われるそうです。そのほかにもOJTやさまざまな仕組みを構築して、まさにCSの真髄を極めていると言えるでしょう。もし、リッツ・カールトンのサービスをご存じないようでしたら、ぜひ一度行かれることをおすすめします。スタッフと接した瞬間に、「リッツ・マジック」とも形容されるサービスを実感していただけると思います。
私は、セミナーや研修で、「あなたは会社の経営理念に基づいて仕事をしていますか?」と参加者に伺います。意外なことに、ほとんどの方が「経営理念を意識することなく仕事している」という答えが返ってきます。社長室や会社案内・ホームページなどには、立派な経営理念が掲げられているにもかかわらず、意外に浸透していないことに社長はびっくりされます。いかに社長が崇高な経営理念を考えていたとしても、実際に幹部・管理者から出る指示が、売上・利益・コストダウンなどの数字のみであると、従業員がハッピーになれるわけがありません。顧客満足ではなく売上や利益を追いかける会社であれば、不祥事やコンプライアンス違反が起きても不思議でありません。リッツ・カールトンでは、サービスのサイクルは従業員の満足から始まると考えています。当然、企業だから最終目標としては利益を上げるということが求められますが、まず利益を求めるのではなく、従業員の満足があってはじめてお客様に満足を提供でき、その結果、会社に利益がもたらされるという考え方を持っています。
実際、高収益な会社ほど経営理念に周りが驚くくらいのこだわりを持っています。経営理念の実践が利益の源泉であり、経営理念が浸透していない会社は生き残れないといっても過言ではありません。「経営理念」とは、会社のビジョン・目標・理想・使命感を明文化したものであり、あるべき姿として、この会社は何のために存在しているか、この会社はどういう目的で、また、どういうやり方でやっていくのか?会社の将来像は?という点について、基本の考えを明確にしたものです。
しかし、社長が、経営理念を自らが語っているだけでは組織の隅々まで浸透するものはありません。社員一人ひとりがしっかりと肝に銘じて理念に沿った行動をしてもらうためには、毎日、経営理念を唱和するだけではなく、人事評価の項目に経営理念に沿った行動を最重要項目に上げることが大切です。経営理念を遵守するより売上目標を達成することを優先する方が評価される評価制度では、従業員は売上を上げる行動を優先してしまいます。経営理念を浸透させるためには、「期待する人材像」に具現化し、「期待する行動指針」「求められる知識・スキル」「好ましい考え方・態度」「成果に結びつく行動特性」などを、職務基準書や人事評価制度に落とし込むことが必要です。このように人事制度を設計し、定められた手順を実行することにより、経営理念が浸透し、組織風土・企業文化が醸成され、そこから従業員の行動規範が形成されます。従業員が経営理念に基づいて行動することで社会からの信頼と評価が得られます。
最後に申し上げたいのは、社長が経営理念のためにどれだけ利益を犠牲にできる覚悟ができるか、すべてはその覚悟から始まると思います。社長にとって「お金より大切なものは何か」、会社において「利益より大切なものは何か」を従業員に明言することです。

お問合せ・ご相談はこちら

ご不明点などございましたら、
お電話もしくはお問合せフォームよりお気軽にご相談ください。

お電話でのお問合せはこちら

06-6228-8152

社員から尊敬され1年でバトンタッチできる経営者に育成する「後継者個別指導 鋳方塾」を運営し、二代目教育に注力!