◆第40号2007年10月14日

部下に教えすぎるな!部下が育つ機会・試練を与えていますか?

 
先日、ある企業の研修を担当させていただいた時のことです。採用が厳しくなっている一方、業績目標を上げられているため、一人の管理者が「もっといい人材を取ってください」と役員に迫っていた。私は、即座にこの管理者に言いました。「中小企業にいい人材が来ることが少ない。自分の指導力のなさを部下や採用責任者の責任にしてはいけません」と。バブル崩壊後の長期不況で、多くの企業が成果主義制度を導入し、人事改革に取り組んできました。その為、コミュニケーションの低下、チームワークの悪化、モラールの低下、人材育成の阻害など、大きな弊害が出ています。私たちの若い頃は、幹部や管理職に、居酒屋で仕事の愚痴を聞かされるのではなく、「人生とはどういうものか?」「仕事にどう取り組むのか?」を教えてもらい憧れたものです。しかし、最近の幹部・管理職は、経営と現場をつなぐ役割をせず、目先の数字を追い求め、自分の保身に走り、部下の成長や部下の人生に関心を持つことを忘れているように感じます。
 
さて、皆さんは、部下の成長や部下の人生を真剣に考えていますか?
 
経営資源には、ヒト・モノ・カネのほかに、情報・時間・技術・空間・企業風土など様々な要素があります。しかし、最も重要なのは「ヒト」です。モノを開発したり、製造・販売するのは「ヒト」であり、カネを稼いだり、使ったりするのも「ヒト」だからです。ヒトなくして、会社経営は成り立ちません。そのヒトを、ただのヒトではなく「人材」や「人財」にすることが、「いい会社」をつくるいちばんの近道であるといえます。人材育成は、幹部・管理職の重要な仕事のひとつです。幹部・管理職が「模範」や「手本」となることによって部下は育ち、会社は、有能な人材の集合体として跳躍することができるのです。逆に、幹部・管理職がしっかりとしていないと、社員全員の士気や能力を低下させることになりかねません。「部下は幹部・管理職の背中を見て育つ」ということを忘れないようにしたいものです。
 
あなたは部下に教えすぎていませんか?部下に試練や逆境を与えていますか?
 
ヒトを有能な「人材」「人財」に育て上げるために、幹部・管理職はあれこれと教えすぎないことです。西洋のことわざに、「魚を与えるよりも魚の釣り方を教えろ」という教えがあります。アドバイスを与えたり、手を貸したりするのではなく、やり方や手段を教えて、後は自分で試行錯誤の中で考えさせることが賢明です。ときとして、優秀な幹部・管理職ほど、部下に対して「自らの釣りのテクニックを見せたくなる」ことが多いものです。だからこそ「教える側」に立つ幹部・管理職は、つねに「魚の釣り方を教える」という視点を忘れてはなりません。テクニックや知識だけで指導しようとか、育てようと考えるのではなくて、考え方や理念を十分に叩き込み、基本を教えた後は、自分で気づかせて、何回もチャレンジさせて乗り越えるのを待つことが真の人材育成です。人から教えられたことはすぐに忘れるものですし、身につかないものです。必要に迫られて自分で感じたこと、興味をもって真剣に取り組んだことが血となり肉となるのです。ですから、幹部・管理職は「答え」として指示を出すのではなく、「答えにたどり着くヒント」をアドバイスするべきです。部下に考える時間を与え、部下が自ら答えにたどり着く支援をすることこそ、部下指導の本質があるのではないでしょうか。一番大切なことは、「部下に釣らせる」という成功体験を与えることです。部下が自分で自分の壁を打ち破り、自信を持つための機会や環境づくりと動機付けを行うことが幹部・管理職の本当の教育と言えます。

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