世界貿易機関(WHO)の閣僚交渉決裂に思う

 

  世界貿易機関の閣僚交渉が土壇場で決裂した。これで、貿易の自由化を進めるはずの多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)は当分の間、凍結が避けられなくなった。世界の経済成長を支えてきた自由貿易体制が大きな危機を迎えたとっても過言ではないだろう。  
  決裂の直接の原因は、米国が中国・インドと農業問題で対立したことである。米国の農業にとって、両国はそれぞれ10億人を超える巨大な輸出市場である。しかし、中国とインドは自国の農業を守り育てたい。このことは先進国の代表である米国と、新興経済大国の代表である両国の対立といってもよい。

  今までは、米国や欧州などの先進国が国際ルール作りを主導し、発展途上国がそれに従ってきた。しかし、その時代が終わったことを印象付けた。今後の国際ルール作りはますます難しくなるであろう。

   その中で日本の働きはどうであったろうか?海外市場と貿易で経済成長を保つ日本が、途上国に「保護主義国」と呼ばれたとは情けない。日本の農業の将来を真剣に考えるならば、進むべき道は市場閉鎖でない。  

  高齢化と生産性の低迷に苦しむ日本の農業はいまや存亡の危機に面している。今こそ農業改革に果敢に取り組むべきである。その為には、耕作放棄地の対策、次世代農業の担い手の育成、企業の農業への参入機会の拡大などを早急に進めるべきである。又、高率関税に頼らずに農家を支援する方策や耕地面積の規模を拡大する改革などが早急に論ずべき課題であろう。

  今後、WTO交渉が再開されても米国や欧州の内部事情をみる限り、今まで以上に各国の意見の調整は難しくなるであろう。しかし、ここで多角的通商交渉を立ち消えにして、自由貿易体制を後退させてはならない。米国・欧州に次ぐ経済規模の日本はその交渉において、傍観者ではなく果たすべき役割と責任は大きいと思う。

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