「歪曲報道」(巨大メディアの“騙しの手口)

 「歪曲報道」(巨大メディアの“騙しの手口)著者 高山正之 PHP研究所 を読んだ。帯には「あなたはまだ彼らを信じられますか?」とある。著者は元産経新聞記者、社会部デスクを経てテヘラン支局長、ロサンゼルス支局長を歴任2001年から帝京大学教授。いくつか興味のある内容を記したい 

 

1.新聞は“ベタ記事(最小1段見出し記事、ボツ一歩手前の記事)が面白い”

  ベタ記事はボツ一歩手前の記事であるが、時には重要記事だが目立たせたくないためにべた記事にしているものがあり、それによって新聞社の姿勢が鮮明に分かる。例えば、以前に、北朝鮮の首領の息子が不法入国して捕まった。日本には横田めぐみさんの両親のように、北朝鮮にわが子を拉致された家族がいる。当然ながら、めぐみさんたちとの身柄交換が思い浮かぶであろう。それで、産経新聞はそうした家族の声を5段見出しで掲載したが、朝日新聞はこの件をベタにして掲載した。同紙は、めぐみさん拉致の証言が出た時も、2ヶ月近くそれを報じなかった。今回も載せたくないがそう露骨にもできないという心情がそのベタ扱いに滲んでいた。

 

 2.新聞は皆同じではない!

  最近まで「新聞はどれも同じ」と言われてきたが、今は違う。例えば、2005年12月6日付けの産経新聞には「汚水の中に沈む中国」という記事が載っていた。中国では今「工業排水の3分の1以上、生活汚水の9割以上が未処理のままで河川湖沼に垂れ流されている」それで、「全国の河川湖沼の7割が飲料水に適さない水質で、地下水の97%が程度の差こそあれ汚染され、1億6千万人が有機物汚染水を常飲している」という。折も折,吉林省の石油化学工場から汚染物質がアムール川に流れ込み、下流のハバロフスクでも大騒ぎになった。これは、他人事ではなく、アムール川は冬に凍結し、やがて流氷として北海道に来る。大変なことになるかもしれない。しかし、同日の他の新聞には中国の汚染の報道はなく、代わりに、中国・精華大学の助教授が「中国が水市場を世界に開放した。日本企業も乗りおくれるな」とやっている。具体的には、中国が外国企業に「浄水場や下水施設を建設させ、20年後にはその施設を没収するが、企業はその間に投下資本を好きに回収できる」とのこと。そんなに儲かるなら、自国でやればよい、絶対に儲からないから外国企業にやらせようとしている。魂胆は見え見えである。

 

3.日本の“最底辺”は優雅だ秋田県で33歳の女が隣家の子供を殺害して捕まった。

  この女は夫と離婚し娘を連れて一戸建ての町営住宅に住んでいた。職にも就かず、つきに10万円の生活保護を受け、母子家庭ゆえに家賃も免除されていた。この女には母親も弟もいる。まともな家庭なら、離婚したら家に戻り母親に子供を預けて仕事に出るであろう。しかし、この女はそこまでして働く気もない。因みに、母も弟もこの女も自己破産している、つまり、サラ金を借りまくっていた。そして、女も弟も車を持っている。無責任で無軌道な女に、日本という国は車まで持つ余裕を与えていたことになる。こんなバカなことがなぜ罷り通るのか?それは真面目に働き納税する圧倒的多数の善良な日本人がいるからである。彼らは、税金がどう公務員にくすねられ、残りがどうどぶに捨てられているか知らない。どぶとは、例えば、この女が住む秋田の藤里町だ。この町は、都会の納税者から送られてくる17億円もの交付金で一戸建て住宅を立て、無職の子連れ女をただで住まわせ、しかも生活保護を付けている。日本には働くものと、働かないものとの間に所得格差はあるが、生活格差はない、いやむしろ逆転しているといえる。ところが、一部の新聞は「日本に貧富の差が広がっている」という「格差社会」を言い立てて大騒ぎしている。だが、秋田の事件が起きた途端に口をつぐむ。彼女を見れば、日本では所得格差が何の意味もないことがばれてしまうからだ。週刊文春はこの事件について「シャワージャーナリズム」という表現で集中豪雨的報道量の凄さと、それに比して中身の薄っぺらさを指摘している。この事件は、生活保護やニート、地方交付金などの日本の抱える問題の生きた症例になるものだったが、その視点で事件をえぐる報道がなかったことは寂しい。 

 

  筆者は産経新聞出身なので、多少の身びいきがあるが、一読に値する本だと思う 

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