第52号2008年1月12日

「拒否できない日本」副題、アメリカの日本改造がすすんでいる。

 
著者 関岡英之氏(文春文庫)を読んだ。
この著者は、日本の色々な改革、例えば、建築基準法の改正や商法の大改正、公正取引委員会の規制強化、弁護士業の自由化や様々な司法改革など・・・、これらはすべてアメリカ政府が彼らの国益のために日本政府に要求して実現させたものであり、そのことはアメリカの公文書に率直に明記されている。と述べている。
そして、近年の日米関係のこの不可解なメカニズムの原因を探り、様々な分野で日本がアメリカに都合の良い社会に変えられて来た経緯を、アメリカの公文書に則して分かりやすく描いている。その一部を紹介したい
 
1、数年後の日本を知る必読の文献
これから数年後の日本に何が起きているか、それを知りたいと思ったときに必読の文献がある。アメリカ政府が毎年10月に日本政府に突きつけてくる「年次改革要望書」である。日本の産業の分野ごとに、アメリカ政府の日本政府に対する規制緩和や構造改革などの要求事項がびっしりと書き並べられている。「年次改革要望書」では、最近まで5つの優先分野が指定されていた。「通信」「金融」「医療機器・医薬品」「エネルギー」「住宅分野」である。しかし、2001年版以降の「要望書」から「住宅分野」が姿を消した。住宅分野については、アメリカは既にほしいものを手に入れた、というわけである。住宅分野についてアメリカ政府が日本政府に要求していたのは、ひとことで言えば木材製品の輸入拡大につきる。もともと日本はアメリカにとって木材製品の最大の輸出市場なのだが、アメリカはビジネス・チャンスを更に拡大しようとして、過去数年さまざまな要求を日本に突きつけていたのである。日本政府がこれまで建築基準法の改正、「定期借家権制度」の導入や「住宅性能表示制度」の導入など一連の規制改革を進めてきた最大の理由はここにあったのである。
 
2、日本政府はなぜ外国業者の利益をはかるのか
この内容については、インターネットで公開されているアメリカ政府の公式サイドから簡単に知ることができた。アメリカ政府自身が、その事実を公式文書の中で堂々と公表している。それにしても、日本政府はなぜ、外国業者のビジネス・チャンスを拡大するために、審議会に諮問して答申書を作らせた上で法改正まで行うという、手の込んだ手続きを踏んでいるのだろう。なぜそこまでする必要があるのか
 
3、クリントン政権の考え出した「年次改革要望書」
そもそもこの「年次改革要望書」とはいったいどうゆうシロモノなのか。日本とアメリカとの外交関係において、それはどのように位置づけられているのか。アメリカ通商代表部の「外交貿易障壁報告書」2000版に「年次改革要望書」が毎年提出されるようになった経緯が書いてある。それによると、これは1993年7月の宮沢首相とクリントン大統領の首脳会談で決まったことらしい。
個別産業分野の市場参入問題や、分野をまたがる構造的な問題の是正を日本に迫るため、アメリカが日本に外圧を加えるための新しい武器として、クリントン政権が考え出したものということらしい。
そして、1994年に最初の「年次改革要望書」が提示された。それは32ページの英語の文書で、個別産業分野としては、農業、自動車、建築材料、流通、エネルギー、金融、投資、弁護士業、医薬・医療、情報通信など、分野横断的なテーマとしては、規制緩和や行政改革、審議会行政や情報公開、独占禁止法と公正取引委員会、入札制度や業界慣行、そして民事訴訟法制度などが網羅され、まさに日本の産業、経済、行政から司法にいたるまで、その全てを対象にさまざまな要求を列挙したものだった。
ところが、不思議なことにマス・メディアでもこのことはほとんど報道されていない。
日本の将来にとってこれほど重要な意味を持つアメリカ政府からの公式文書である「年次改革要望書」の全文が日本のマス・メディアで公表されたことはない。
それでは、アメリカ政府が日本政府に毎年どんな要望を突きつけているのか、一般の国民はどうすればしることができるのだろうか。
 
4、内政干渉を隠そうともしないアメリカ
種明かしは、在日アメリカ大使館の公式ホームページで全文が日本語に翻訳され公開されている。過去数年のバックナンバーもすべて日本語で閲覧できる。アメリカという国は内政干渉の事実を隠そうともせず堂々と構えている。隠そうとしているのは干渉されている側の方なのかもしれない?
 
【著者】1961年生まれ、慶応大学法学部を卒業後、東京銀行に入行、14年間勤務の後、早稲田大学大学院理工学研究科に入学して建築を学び、2001年修士課程終了
 
一部を記しましたが、日米関係を理解する上で素晴らしい一読に値する本だと思います。

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